銀輪日報

本と自転車旅とB級グルメ

イーペルの不思議な蛇口 (140529)

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不思議な蛇口だ。どうやって水が出てくるんだろう?

パリから高速道路A1号線を北へ向かった。なだらかな丘陵地帯に小麦畑と森がずっと続く。農業国フランスを感じさせる豊かな大地を3時間、300kmのドライブでベルギー国境を越えた。そしてイーペルという街を通りかかった

 

のどかな田舎道のラウンドアバウトに突如巨大な蛇口があらわれた。空中に浮かぶその蛇口からは勢いよく水流がほとばしる。これはすごいアイデアだ。感動のあまり車を降りて写真を撮った

 

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よそ見運転で事故るやついるだろ

 

後に知ったがこの街は第一次世界大戦西部戦線の激戦地だ。史上初めて毒ガスが兵器として大規模投入された。三度に渡る会戦で50万人近くが戦傷死した。街は廃墟となり復興に半世紀以上を要した。そして今もなお年間100トンを超える不発弾が見つかり、毒ガスによる土壌汚染も残る

 

当時の塹壕や戦争遺構が数多く残り、それらを巡るツアーも盛んだということだ。まさかそんな歴史があることも知らずに僕は、フォトジェニックな写真を一枚取っただけで満足しその街を素通りしてしまった。なんと表面的で薄っぺらな旅なんだろうかと後に悔やんだ

 
旅の醍醐味は訪れた新しい土地や街の空気や景色に触れいままでにない経験と感動を得ることだ。そしてそれを思い出として刻み人生をより豊かにしていくことだ。新しい価値観はそういう旅で見つかるものだろう


たしかにいきあたりばったりの旅も悪くはない。しかし本来得られるはずの経験や感動を逃してしまうことがある

 

旅の質を向上させるにはしっかりとした事前準備と情報収集が必要だ。誰かが通った道をなぞるだけの計画など価値がないと僕は今まで旅行ガイド本の類をバカにしていた。

 

しかし地球上未踏の地はほぼ残っていない。あったとしても素人の僕が簡単に挑戦できる場所ではない。結局僕が今まで通った道、これから通る道も今まで誰かが通った道なのだ。ならば先達の経験と知恵を積極的に取り込んだ上で僕なりにモノにしていこう

 

考え方を変え、なるべく多くの情報を仕入れ綿密な旅の計画に取り組むようになった。そうすることではっきりしてきた。グルメでもショッピングでもない。知への探求が僕の旅のテーマということに

 

 

 

 Passchendaele, The Third Battle of Ypres  (2分半でよくまとまっている)