銀輪日報

本と自転車旅とB級グルメ

乗鞍スカイライン~乗鞍岳(3026m)バイク&ハイク

2019.08.11 35.3km
 
 
深夜の東海北陸道飛騨清見ICから下道を小一時間、カーナビを頼りに午前3時にデポ地の平湯峠の駐車場に到着した。
 
全く明かりのない駐車場に先客が一台だけ止まっていた。同業者と思ったが自転車を準備する気配はなさそうだ。僕は車のエンジンを切り、外に出て身体をストレッチさせながら夜空を見上げた。満天の星空だ。吸い込まれてしまいそうだ。
 
思ったより簡単に駐車場を確保できた安心感もあり、ゆっくりと簡単な朝食を車の中で済ませ、暗闇の中で持ってきたヘッドランプの明かりを頼りに自転車を組み立てた。そして滅多にない自動車輪行に僕は忘れ物がないよう入念に確認した。
 
乗鞍スカイラインのゲートは午前3時半開門だ。まだまだ夜明けは遠いが午前4時前に意を決して出発した。ゲートの係員と挨拶し乗鞍スカイラインへ取り付いた。
 
すぐに僕の視界から人工的な光は全消えた。僕は前照灯や計器類の照明を落とし、暗闇への同化を試みた。ゲートで熊が出るから気をつけてと言われたが何故か暗闇の中全く怖くない。僕は大自然に静かに溶け込んだ。
静寂の闇の中、徐々に目がなれてきて降り注ぐ星の光にうっすらと白いアスファルトの道すじが浮かび上がる。凛とした空気の下、僕は黙々と自転車を漕ぎ続けた。
暗闇の中、遠くからバスが登ってくるのが分かる。ご来光を目指す登山客を乗せた濃飛バスだ。僕は前照灯をつけ存在をアピールした。数台のバスが過ぎると再び静寂が戻った。僕はライトを消し夜明け前の漆黒に溶け込んだ。
少しづつ青やオレンジ色にそまり始めた雲ひとつない空に北アルプスの稜線が浮かび上がる。美しい瞬間だ。目覚めたばかりの小鳥達が360度のサラウンドステレオでさえずりはじめる。内容はわからないがなんだか楽しそうな会話のようだ。
 
途中、望岳台にて初めての休憩を入れた。まだ4時半過ぎだ。静かで美しい。本当に来てよかった。
 
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北アルプスの美しい稜線をカメラに納め再出発だ。稜線から爽やかな乾いた涼風が吹きおろしてくる。登り続ける僕が汗がかかない程度で温度飽和する。ずっと無理なく漕ぎ続けられそうだ。遠くに単独峰の御嶽山が綺麗に望める。高山盆地ははるか下だ。この道は雲ひとつない天空に続いていく。うまく表現できないが本当にきて良かった、生涯最高の朝だ。
 
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森林限界を超え、見晴らしの良い山岳観光道路は貸し切り状態だ。絶景を写真に撮りながら、ゆっくりと味わうように登った。いそがずなるべく長くこの最高の登坂を楽しみたいと思った。
 
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そして長野県境の標高2716mの畳平を踏んだ。信州側は雲海が広がっていた。ここで自転車をデポし、徒歩で乗鞍主峰剣ヶ峰3026mを目指す。爽やかな空気とカラッと晴れた空が気持ちいい。
 
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思ったより本格的な登山道でそれなりにキチンと装備を整えた登山者で混み合う中、Tシャツ、短パン、サンダルという軽装備に気後れした。なにが「ハイヒールで登れる3000m峰」だ。ちょっと乗鞍をなめていた。
 
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万が一これで天候が急変した場合、真っ先に低体温症でオダブツになるのは僕だ。今後気をつけよう。その分フットワーク軽く石ころだらけの登山道をゴボウ抜きで剣ヶ峰を踏んだ。お盆休みシーズンで流石に頂上の乗鞍本宮では15人ほどが列をなし写真撮影の渋滞が出来ていた。
 
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下りは30分ほど。あっという間に快適なダウンヒルが終わった。
 
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車での帰り道、神岡鉱山のカミオカラボに寄ってみた。道の駅に併設されスーパーカミオカンデという装置に関する展示館だ。子ども向けの内容だが分かりやすい。大型のプールを突き抜ける宇宙素粒子ニュートリノが放つチェレンコフ光光電子増倍管で検知する事で観測する装置だ。浜松ホトニクス特製の光電子増倍管は、微弱な光を1000万倍増幅し電気信号へ変換する。その検出精度は月に置いた懐中電灯の光を捕らえられるとのことだ。特記すべき展示物はなく再訪の必要はなさそうだ。
 
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そのまま越中東街道神通川沿いに下った。スノーシェッドやトンネルが多く豪雪地帯を思い起こす。自転車向きのコースではない。早めの昼食は北陸民定番のソウルフード8番ラーメンの塩バターラーメンとギョーザだ。失った電解質を補給した。平野部はいつもの湿度の高い夏の空が広がっており富山自慢の3000m峰は全く見えなかった。最後に片山津総湯の温泉で疲れを癒やし最高のライドをシメた。