銀輪日報

本と自転車旅とB級グルメ

点線国道152号線青崩峠を強行突破!

2015.07.25-27 

 

Day 1 - 70.3km 中央構造線 

 

10:20am 夏の空は高く晴れ渡っていた。雪の残る北アルプスから諏訪湖霧ヶ峰蓼科山八ヶ岳までの大パノラマ風景が眼下に広がる。この場所を提供してくれた杖突峠の茶屋に敬意を払う意味もこめコーヒーとパンを注文し、ゆっくりとその景色を心に焼き付けた。

 

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杖突峠からのパノラマ。北アルプスから八ヶ岳まで

 


11:32am 危うく見過ごしそうになった板山露頭についた、確かに素人目にも断層であるとわかるが、単なる崖にしか見えねえ。これが日本を分断する中央構造線と気づいた地質学者はスゲエ、よく分かったもんだ。

 

どうやってその結論に辿り着いたか興味深いところだ。数カ所訪れた他の露頭でも同じ思いをした。

 

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よくこれが中央構造線と気づいたもんだぜ

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涼しい風に稲の香りがオイシイ。思わず止まって深呼吸した

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中央構造線が走る伊那谷を振り返った。ここもいい風が吹いていた

 

04:32pm 日本一美しい村の大鹿村の客室が3つしかない小さな民宿に到着した。予約していることを告げると自転車の方ですね、お待ちしておりました。お風呂も湧いていますよと、チェックインもなにもなくついて5分もしないうちにお風呂でくつろいだ。

 

その後夕食まで、エアコンのいらない部屋であえてテレビもつけず、何年ぶりだろうかと考えながら、タタミの上でゴロゴロするしあわせをかみしめた。

 

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畳でゴロゴロ。窓は開けっ放し。蝉の声と、遠くに青木川の流れる音が聞こえる。日本の正しい夏なのだ

 

 

Day 2 - 56.8km しらびそ峠の彼方へ

 

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安康露頭。こんなちっぽけな場所をよくつないで中央構造線という大断層を見つけられたものだ

 

09:21am 宿を出発して2時間弱、15kmの道のりを600m標高を上げ1314mの地蔵峠にようやくついた。峠の向こうは下りで一息つけると思ったが、眺望もなくたんに坂の途中だった。その後も上り道が続いた。

 

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地蔵峠。本当はまっすぐ突っ切ると下りなのだが急斜面過ぎて道路が作れず点線国道となったまま。左の蛇洞林道を登り続けた

 

11:16am 続いた上り道を時折吹き下ろす冷たい風に元気づけられながら淡々と登りつづけた。1500mを越えるあたりから静寂の領域だ。ゼイゼイ言う自分の呼吸音と、時折遠くにジェット機の音のみが聞こえる。

 

谷の向こうに平行して走る伊那山脈の主稜線が目の高さとおなじになる頃、しらびそ峠1833mへついた。南アルプスの稜線が美しい。そしてここも坂の途中だった。目標としていた地点についた瞬間、その目標は単なる通過点となり過去に流れていく人生の縮図を見た。

 

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11:32am とうとうしらびそ高原着。標高1918m。27kmの道のりを4時間以上かけて1100mの標高を稼いだ。宿でもらったロードマップをみたら車だと所要時間55分だった。じぶんでゼイゼイいいながら登ってきたことに達成感があるのだ。

 

 

01:01pm 杉林を15分くらい歩いて天空の里ビューポイントから大栗の里を望んだ。谷に向かった急斜面の一部をえぐるように家々が立ち並びつづら折りの道路がつながっている。どうしてこの村の人々はこんな不便なところに住むことになったのだろうか少し気になった。平家の落人だろうか。手がかりは得られなかった。

 

 

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日本のチロル、下栗の里。しかしチロルってなんだ?

 

01:55pm 旧木沢小学校の廊下で木造校舎を写真に収めた。昭和7年に建築された校舎に、なにか懐かしさと暖かさを感じた。

 

 

 

07:15pm ランチメニューから選んだ信州みそかつ定食を待っていた。こんな時間なのにランチメニューしかないふしぎな食堂だ。お客さんは村の人々が中心。老若男女たまたま居合わせたようだが、久しぶりね。とか、今日の野球の結果や、村を離れた知り合いの消息と昔話でわいわいがやがやと盛り上がっておりすっかり村の情報交換の場と化していた。

 

カウンターのスミッコでビールを飲みながら話にそば耳を立てていると、しっかり地元に根づき、みんなの顔と名前が一致し、なにげない日常のちょっとした出来事がニュースとして楽しむ小さくしかし密度の濃い地域社会を垣間見た。

 

ちょっぴり羨ましく感じた。そして統計上の人口密度と、心理的な地域社会の関係性の濃度は反比例の関係にあるのだという仮説に思い至った。時間を見つけて論文にまとめておこう。

 

 

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Day 3 - 29.0km 塩の道、青崩峠

 

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ここから青崩峠までは6kmほど。道は荒れチャリを押して歩いた。最後の登山道をなかなか見つけられず、峠まで結局2時間位かかった

 

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沢を越えて登山道を探すも冷静に考えると沢越えの道なんてありえね



 

 

07:25am つづら折りの急登を淡々と上り詰めると稜線の向こうから明るい光が差し込んできた。ついに青崩峠だ。

 

宿を出て3時間、通行止めの柵を乗り越えて進んできた道は、路面は苔むし路肩は崩落し始め一部はがけ崩れのまま沢が出来ており、もう管理はされていないのだろう、道路としての役割を終え自然に戻ろうとしていた。

 

天候や、崩落の状況、沢の水量次第では突破できず敗退せざるを得ない。たまたま天候の良い時期に通りかかり無事これらの難所を突破し、最後の登山道をなかなか見つけられず危ない思いもしたが、とにかく峠越えができたたことに本当に運が良かった。

 

二度と踏むことはないだろう青崩峠遠州側から吹き付ける涼しい風に一息ついた。遠州側の峠道は石畳となっており往時のにぎわいを感じた。

 

 

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ついに青崩峠がみえた。難所だけに、やっとついたという安堵感と充実感が味わい深い

 


09:07am 標高420mの高根城本曲輪から眼下に広がる水窪の町を俯瞰する眺望は最高だ。無骨な櫓や柵などが復元されており優雅なお城というよりも荒くれ者が立てこもる砦といった感じだ。雲ひとつない青空のもと、時間をかけてゆっくりと景色を楽しんだ。

 

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高根城本曲輪。戦闘拠点という無骨な感じだ。でも眺望は平和に最高

 

 

峠で山道でお店で出会う人やサイクリスト達との何気ない挨拶や会話が新鮮だった。なくてもいいのに一言二言何気ない話題を入れ会話を楽しもうとする。慣れない僕は、我ながら正直ぎこちない会話ぶりに、僕はいい笑顔で答えていたのだろうか。ココロのスミッコで少し気になっていた。

 

 

本曲輪から続く遊歩道を少し下ると初老の男性三人組が、草刈りの作業を行っていた。僕は『おはようございます。暑い中お疲れ様です』と精一杯元気よく挨拶をした。彼らは『あんた元気やなぁ。自転車できたの?ガンバッテや』と。僕は『朝っぱらからこんなところで作業しているみなさんも元気ですよ。いやー、良い眺めのいい場所ですね。来て良かったですよ。』と答え、自然に皆でわっはっはっはと笑いあった。

 

 

ちょっと早いが今回の旅をここで終えることにした。達成感と充実感をおみやげとして持って帰るにはいいタイミングだ。麓の向市場駅でのんびりと一時間以上電車をまった。照りつける太陽のもとS時にカーブする単線のレールが陽炎にゆらゆら揺れていた。

 

 

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一時間以上まってようやく現れた飯田線

 

ルート