銀輪日報

本と自転車旅とB級グルメ

明神峠~三国峠~鉄砲木ノ頭のヒルクライム三昧と山梨県立リニア見学センターに日本の黄昏を見た

2019.11.10 65km 

 

始発電車で小田急~御殿場線を乗り継ぎ駿河小山駅へ。07:09着。御殿場線交通系ICカードが使えるようになっていた。これはありがたい。小銭を持っていかずに済む。毎回駅前で自転車を組み立てるのは僕だけだ。僕にとっては毎年この時期の定番なのだがあまり人気のないコースのようだ

 

07:20発。すぐに県道147号線山中湖小山線に入る。この県道は18%の急勾配区間がありバス・トラックという大型車両がが侵入してこないサイクリスト天国だ。静かな峠道をぐいぐいと高度を上げていく。遠く麓の富士スピードウェイからスポーツ走行を楽しむレーシングカーの排気音が心地よく響いてくる。カラッと晴れた青空に富士山がドーンと構える。冷たい朝の空気の中、踏みごたえのある激坂を登っていく。最高のサイクリング日和だ。僕はじっくりと時間をかけて登っていった。サイクリスト2台とすれ違った。時間からして地元の方なんだろうな


道路が新しく舗装されていることに気づいた。そういえばこの道はオリンピックのコースだ。僕と同じこの峠道を世界選りすぐりの選手が駆け抜けていくさまを是非テレビ中継で見たいものだ。初めてオリンピックを実感した。ちょっと楽しみになってきたぞ

 

明神峠前の最大勾配18%区間でさっきから気になっていた富士山をバックに記念写真。お気に入りの写真が撮れた。ちょっと幸せ

 

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2時間ほどで三国峠に到着。チャリをデポして鉄砲木ノ頭までハイキングだ。頂上には15名ほどのハイキング客がおり賑わっていた。ワンちゃんをつれてきた女性グループがいて若干うるさい。なんとなく観光地化しているなと思った

 

目の前に広がる絶景を時間をかけて楽しんだ。このコースのハイライトは前半に集中しており上り詰めてしまえば後は下るだけ。これからどうしようかと頭の隅で考えた。いつもならば道志みちを下って尾根幹から直帰なのだが、今回は災害不通区間が残っていて藤野に出なければならない。ちょっとダルい。あと下りは寒いし。もしくは雛鶴峠という手もあるが、眺望があるわけでなく単なる作業感がありこれもイマイチ。なのでたまには富士五湖周遊コースを気軽にだどってみよう

 

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サイコーです。寒くなってきたなぁ

 

パノラマ台は中国からの観光客でごった返していた。わざわざお越しいただき大変ありがたいのだが週末の新宿のように人が多すぎ。のんびりできない。湖畔まで降りてコンビニコーヒで一息ついた。段々と雲が出てきて富士山が隠れてきた。風も強くて富士五湖を回っても期待する逆さ富士は見れそうにない。どうしたもんだか。次の目的地、忍野八海人民幣が飛び交っていた。サイクルラックがないしこの人混みに路駐もためらわれる。しかたなく写真を一枚だけとって離脱した

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道の駅富士吉田で富士山レーダードーム館にいってみたが入場料が630円もする。何回か来たことあるが結局覚えていないという場所だからもういいやと諦めた。道混んでいるし富士五湖周遊コースはイマイチになってきた。どうしようかと悩んでいると一つだけ思い出した。山梨県立リニア見学センターだ。ここは行ったことがない

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道の駅富士吉田の広場では紅葉が美しかった

 

たまには優雅に地元の味でも楽しもうとあらかじめ調べてきたほうとう専門店に向かった。入口のメニューをみるとほぼすべて1500円以上!マジかよ。たかが味噌煮込みうどんに1500円も払えるか!なめんな

 

よく考えると僕の地元の深大寺そばを参道のお店で食べると1500円するのとおんなじだ。要は観光地価格。地元のやつは絶対にそんな高い食べ物を食べるわけがない。自分で作るよな。スーパーでちょっと高いけどひと玉100円くらいでうってるしな。来週末にでも材料買ってきて自分でつくろう。サイクリングに親和性の高いラーメン屋を探すがイマイチぱっとしない。まぁいいかと下り基調の139号線を大月方面へ向かった

 

途中、サイクリストや労働者御用達の格安台湾料理店を見つけるが、ランチ780円と大書きされた赤い看板の前に観光バスが3台止まり、中国の観光客がわんさか駐車場で富士山の写真を撮りまくっていた。こんなところで千円、二千円ケチらずにせっかくだから「ほうとう」でも食わせてやれよと少し気の毒に思った

 

小一時間でリニア見学センター着。入場料420円を払い中に入る。しょぼいパンフレットをみると一階は「リニアを学ぶ」、二階は「リニアを体験する」、三階で「山梨の未来が見える」というコンセプトの展示だ。トウシロウ向けのパネルを中心とした明瞭で解かりやすい優しい展示。シッタカ技術ヲタの僕には消化不良だ

 

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この実験展示は面白かった

まぁでも此の分野の基礎的な知識の整理がついたことに価値があった。東海道新幹線開業の2年前、1962年に次世代の超高速鉄道として研究に着手。もう55年以上も資金を溶かし続けている。夢の営業開始は東京~名古屋間で2027年、東京~大阪間の全線開通は2045年だ。その効果は東京・大阪の所要時間がわずか67分に短縮!研究開始した1960年代、東京・大阪間は特急「こだま」で6時間半。現在は「のぞみ」で2時間22分。正直、今さら意味あんの?とオワコン感を覚えた

 

総工費9.3兆円をかけた大型プロジェクト。アポロ計画が15兆円。そしてNASAが2024年に月面への再上陸を目指すアルテミス計画の総費用は3.3兆円だ。東京・大阪を1時間に短縮するより月でも目指した方がよっぽど国威発揚になる気がする。そもそも飛行機で行けば今でも一時間じゃん

 

僕の大好きな原子力関連で見ると、原発銀座の一等地にお店を構える高速増殖炉もんじゅ。いままでに1兆円を注ぎ込み、いまなお一日5千万円の維持費が溶けていく。その輝かしい運用実績は稼働250日。僕が一年間に働く日数と同じだ。そして得られるお金はほうとう2千食分...考えるだけで鬱だ。金額だけを並べるとはっきり言って僕に生きている価値はない

 

そして中国への1979~2018年までの政府開発援助は3.65兆円。で一昔前の2002年に中国はサクッと上海浦東国際空港のリニアを開業。運用ノウハウを着々と積み上げている。ここを訪れた中国人は、自国の国力と技術力に大いに誇りを持つことだろう。なーにチンタラやっとんじゃ。ぷっ。っと

 

ちょっと残念な気持ちで見学センターを後にした。大型プロジェクトは技術力よりも政治力・決断力が重要なんだなぁ

 

大月駅前も北京語が飛び交っていた。いわば実効支配下にあるようなもんだ。両国の勢いの違いを肌で感じた旅だった


僕は輝いていたであろう時代の日本のガラパゴス技術の粋を集めた各駅停車の中央本線にゴトゴトゆられのんびりと高尾に向かった