銀輪日報

本と自転車旅とB級グルメ

ちょっとピンぼけ (190704)

 

 

「写真を撮る」とは、単にシャッターをきることではない。その瞬間に自分が何を感じたのかをさまざまな工夫によって表現することだ - ブレンダ・サーブ


「今はネットで写真を公開することができる。昔なら、靴箱の中にしまっておくだけだった。でも写真というのは誰かに見てもらって初めて生命を持つものだ」 - ジム・リチャードソン

 

 

僕らは週末を心待ちにし自転車であちこちに出かける。そしてその風景や体験を自分の感性で切り取りカメラに収める。どんな写真にもそれにまつわる物語がある。印象的なお気に入りの写真を撮影できればその物語は一層引き立ち記憶に焼き付けられる。それを大切にココロの中にしまっておいてもいいし、共有するのもありだ。また他の人が撮影した心を衝く写真に感銘をうけ同じ場所に行ってみたい、体験してみたいと行動を起こすこともある。

 

写真は人の心を動かすことができる。

 

できれば僕も良い写真を取りたいものだ。ただし、写真を撮ることに夢中になりすぎて目の前の出来事を軽視しないように。僕のようなド素人が撮影技術について語るのはおこがましいが、それでも最低限の知識とともに写真撮影を楽しんでいきたい。

 

技術がどれほど進化しようとも、高価な機材を使おうとも写真のキホンは変わらない。すなわち「構図」「ピント」「露出」の三大要素だ。

 

「露出」についてはカメラで自動補正してくれるし、極端な失敗がない限り後で写真加工アプリで自分好みに修正が可能だ。

 

「ピント」は、AF(オートフォーカス)機能を使えば基本的に問題ない。しかし撮影者の意図しない被写体にピントが合っていることがあるのでその点注意が必要だ。

 

「構図」は、もっとも重要な要素と言える。よく言われるように自動構図設定というような便利なボタンはカメラに実装されておらず写真家の腕に任せられている。


僕らは多分、サイクリングや旅が主な目的。写真撮影はあくまでも思い出をより鮮明に残しておくための手段だ。すなわち写真撮影そのものにあまりお金と時間をかけていられない。手持ちのスマホで気になった時にサクッと撮ってしまえば十分だ。そして撮影したほぼすべての写真は印刷されることなく、PCやスマホの画面でのみ鑑賞される。

 

この前提を元に最低限のポイントを抑えておきたい。

 

先に述べたように撮影の三大要素のうち、「構図」と「ピント」は後からの補正が効かない。そのため撮影時にはこの2点に注意を払うべきだ。

 

「構図」づくりのポイントは、画面に何を入れるか、そしてどう入れるか。構図づくりの詳細については専門サイトに任せよう。たとえば次のサイトはよくまとまっている。

 

meetsmore.com

 

そして構図づくりのために、レンズの特性を知っておくことは大切だ。焦点距離とか、広角、標準、望遠レンズという言葉を聞いたことがあるだろう。焦点距離とは、ピントが合ったときのレンズとセンサーの距離のこと。35mmフィルム換算で50mmが標準とされている。これは50mmレンズが人間の視野角に最も近いとされるためだ。

 

もし詳しいことを知りたければ、名門ニコンのサイトがわかりやすい。さすが餅屋中の餅屋だ。 

www.nikon-image.com

 

焦点距離が短ければより広角で視野(画角)が広がり、長ければ望遠と呼ばれ、画角が狭くなる。

 

わかりやすくいうと広角レンズは虫眼鏡。焦点距離はせいぜい10センチとといったところだろう。そしておじいちゃんが新聞を読めるくらいに焦点の合う範囲は広い。すなわち画角が広い。そして望遠鏡は遠くの対象物に焦点が合う。焦点距離が長いということだ。実際に使ってみるとわかるが、望遠レンズは対象物に対してブレを抑えるのが難しいのが欠点だ。

 

これらのレンズ特性を写真撮影に活かすと、広角レンズは広がりのあるダイナミックな写真で「物語を語る」ことに向いている。反面、遠くにあるものは肉眼で見るよりもずっと小さく映るのが弱点だ。望遠レンズは被写体をぐっと引き寄せて画面の主役として強調できる。ただし画角が狭いため部分的な範囲しか切り取れない。この特性を利用して、画面の要素をグッと絞り込みたいときは望遠レンズが適切だ。また被写体深度(撮影者からみてピントが合う前後の範囲)が浅いという特徴があり、背景がぼやけやすくなり(いわゆるボケ)、背景がごちゃごちゃしていても目立たなくできるため人物のポートレート撮影なんかによく使われる。望遠レンズは「特定の被写体を引き立てる」ことに向いている。

 

作例でみてみよう、この写真は同じ日、同じ場所から撮影したものだ。マリナーズジャイアンツのオープン戦。イチローの打席だ。特徴的なバッティングルーチンを望遠で大きく切り取ってみた。定番の構図で写真としてはいまさら面白みのないものだ。しかし消すには惜しいので取っておいた。

 

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かっこええなぁ

 

次の写真は少し引いた写真だ。広がりのある画面でオープン戦ということや巨人戦という「物語」が見えてくる。僕はこちらの写真のほうが味わい深い写真だと考える。

 

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もう少しみてみよう。この写真のシングルトレイルは緑に映え、広大なジャングルの中に消えていくように視線を誘導するはずだ。前景には「担ぎ」を入れているMTBerが写っておりこれから進む先を暗示している。マウンテンバイクのワンシーンという物語を的確に捉えた写真だ。

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たまたまだけど後から見返すといい写真だ

 

もう一丁、マレーシアでの早朝のトレイルランニングのシーンだ。

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朝もやのなかを駆け抜けた

この写真のオリジナルは次の写真。これも悪くないが画面の下にある水たまりがあまり意味がないそして、前のランナーとの距離感がある。そのためいらない部分をクロップし構図を調整したのが上の写真。正解はないが、僕は上の方がお気に入りだ。このように構図は写真ソフトによる微調整の余地はすこし残っている。

 

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「露出」に関する失敗作を。これはサハラ砂漠からの熱波に襲われた欧州大陸のコルドバで炎天下40度のなか取った写真だ。頭フラフラで正直写真なんかテキトーでいい。という状態がよく現れている。露出過多かつ日光によるフレアがきつすぎて、写真加工アプリでももうどうにもならん。オリコウサンな写真ではないが、これはこれで撮影した本人には味わいがあっていいけどね。そんな裏事情を知らない人にはたんなる失敗作。

 

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 「ピント」については機械におまかせしているのが現状だ。後でみたみたら思うところに焦点があってなくて残念な思いをしたことがある。こればかりは後から修正が効かないので慎重にキメてほしい。

 

似たような構図の写真を2枚。マヨルカ島で昼間っからビールを飲んでいた時にフト思いつきで撮った写真。キチンとビールにピントが合っている。しょぼいiPhone SEだけど、ボケもキマった!

 

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フィリピンの名門サンミゲル社のピルスナービール。旧宗主国のスペインに殴り込みだ!うまいんだわこれが

 

そしてこれは南ドイツの行きつけの居酒屋で注文したラムステーキを待っている時に手持ち無沙汰に撮ったものだ。

 

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世界最古創業1040年の醸造所ヴァイエンシュテファンの白ビール。うめ~

 

ちょっとピンぼけ。

 

 

  

ちょっとピンぼけ (文春文庫)

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※ ギュギュっと厳選した写真撮影に関するおすすめ本を紹介しておこう。ナショナルジオグラフィックの『プロの撮り方』シリーズは、美しい写真を作例とした良書ばかりだ。そして文章も刺さる。さすが泣く子も黙る天下無双のナショジオ。質が高く、何度も読み返したくなる。どれも高いので近くの図書館にないか探してみてね。もし買うならKindle版よりハードコピーがいい。値段もそんなに変わんないし本棚とかテレビ台の下の棚ににおいておくと格調高いオーラを放つインテリアにもなる。

 

 

これは絶対読んでおくべき。価格は3,190円で若干つらいぜ。でもきっと愛蔵版となるよ。

プロの撮り方 構図を極める

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次はこれ。見る力、デザインの要素、構図法、光の効果、フォトショップという内容で簡潔にうまくまとまっている。価格は2,530円でまあ許せる。

プロの撮り方 創造力を極める

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これもいいが5,060円と高額なのが悩ましいところ。ふざけてんのか?とおもうが無視できないくらい中身もいい。撮影のキホン、カメラの基礎知識、構図、光、マニュアル撮影、デジタル暗室、そして応用編で被写体別(人、風景、スポーツ、旅先など)のテクニックが網羅性がいい。

ナショナル ジオグラフィック プロの撮り方 完全マスター

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国産ではこれ、きめ細かい解説がありさすが、お・も・て・な・しジャパンだ。製本は普通なのでKingle版でいいかな。実用書。

(構図テク早見表付) 完全版 写真がもっと上手くなるデジタル一眼構図テクニック事典101+

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