銀輪日報

本と自転車旅とB級グルメ

ソウル市江南 (140828-29)

死亡を含めた如何なる損害賠償請求に関する権利放棄書面に署名の上訪問を許される緊張の38度軍事境界線板門店。小道の両側に小さなお店がところ狭しと並びガラス窓の向こうにお茶を引く薄着の売春婦が硝子を一斉に硬貨でコツコツ叩き潜在顧客の関心を引こうとする衝撃の飾り窓通り清涼里スケートボードに下半身のない身体を載せ、手で船を漕ぐようにあちこち移動しまたあるものは片手でチョークに即興の詩を道路に紡ぎ出す自称傷癒軍人?達が物ごいを生業とする南大門広場

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情チョコパイ。絶妙なネーミング

初めての海外旅行でオドオドするオレに生々しい現実を垣間見せてくれた街。漢城。結局、今日に至るまで再訪の機会は全くなかった。 ひょんなことから一泊二日の行商の機会を得た。相変わらずオノボリのオレはしっかり大韓航空機の窓側の席をゲットしておく。

 

出発当日の天候は雨。富士山やら日本アルプスを飛び越える航路を楽しみにしていたのだが、羽田空港34R滑走路を離陸後、15秒で分厚い雲の中。期待はずれの天候に手持ちぶさたでオロオロするオレにタイミング良く、給食が提供される。

 

予期せぬ10時という中途半端な時間に、取り敢えず出しておけとばかりにテーブルに投げ出された給食トレイを前に、いま食うべきかどうかを悩んでしまう。フト、据え膳食わぬは男の恥。という殺し文句を思い起こす。おおそうだ、オレはオノボリではあるけれども、ホモでもなければオカマでもない、故に導き出される最適解は、ただ一つ。有り難くいただくことにする

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GPSでフライトログを確保。近いなぁ

なんとなく大正デモクラシー期の日用品の宣伝ポスターに登場するような古典的美女の雰囲気を醸し出す給食当番が、オレに飲み物を聞いてくる。一瞬の躊躇いを感じたものの、面談予定は午後3時。この行商にオレが雇用主から期待されていることは、おりこうさんでいることではない。結果を出すことである。といつになく、厳しく我が身を正してみる

 

そう、おりこうさんでいることが目的ではないオレは朝っぱらから元気良くビールをたしなむことにする。 デモクラシー娘は、テキパキとオレに缶ビールと、プラスチックのグラスを渡してくれる。アルミ缶にHiteと銘柄が、またsince1933と誇らしげに印刷されている。初めて見た。プシッとプルタブを引き、矢鱈揺れ始めた機内で慎重にグラスに注ぎ入れる。そしてグビグビとのどを潤してみる。

 

でた、大陸風水っぽいビール。コクがなくあっさりとした喉ごし。想像するに、濃い韓国料理を食べながら、グビグビ水がわりに頂くのがもっとも正しい飲み方であろう。あくまでも奥ゆかしく、主役をしっかりサポートする、地味な名脇役。そんな上品なテイスト。そんな育ちの良さゆえに、扇風機が回る畳の部屋でゴロゴロし、ポテトチップつまみに高校野球をとりとめもなく見ながら、このビールを飲む。こういう用途には適さない。

 

単体女優として主役を張るには、何となく物足りない。やはり、ビールは、その土地の風土や気候、料理に合わせて独自進化していく。そのため、ビールは地産地消、その土地で飲むのが一番美味しい。という、ビールガラパゴス進化説を思い起こす。今後、論文にまとめてナショナルジオグラフィック誌に投稿してみよう。

 

朝鮮半島上空は晴れ。しっかり窓にへばりつき車窓を堪能する。青色の屋根が多いのに気づく。そういえばニュースかなにかで大統領府のことを青瓦台と言っていた。屋根を青くすることになにか意味があるのだろうか、それとも単に空爆目標としての大統領府をカモフラージュするためなのだろうか。後で迎えに来てくれた現地スタッフに聞いても分からなかった

 

金浦空港の入国審査は日本人をメインに長蛇の列。結局クリアに45分くらいかかった。日韓関係悪化による入国審査の厳格化、まぁ暇だし難癖でもつけてみっか。ということなのだろう。そんなことより、さっさと入国させて街でカネを落とさせる滞在時間を伸ばしたほうがよっぽど国益にかなうぜ。あんた達もまだまだ考えが浅いぜ。と思いながらターンテーブルで荷物を回収し税関へ。さりげなく無害なドシロウトを装うも、俺だけ別なテーブルに呼ばれ荷物と身体検査。税関検査で引っ掛かる率の高いオレには、またかと言う程度で粛々と検査に応じる。こんなこともあろうかと見つかるとメンドクセー商品見本は別送してある。ざまーみやがれハズレだぜと無罪放免。 片側4車線の立派なオリンピック道路を西に市内江南地区へ

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うまいんだわこれが


昼飯はブテチゲ、すなわち軍隊鍋。朝鮮戦争中米軍からもらったハム、サラミ、スパムをキムチ、ウドン、ジャガイモをサイコロサイズに切ったものをマカロニなんかといっしょにチキンスープで煮込む。これをご飯といっしょにハフハフ掻き込む。会社組織で言うと使い捨てのソルジャーと位置付けられるオレぴったりの食事。つうか、アウトドア料理としてイケてる。当然ご飯をおかわりしてお腹一杯。 サクッと面談をこなし電光石火でレポートを仕上げアタマの一時メモリをクリア。思い残すことなくすっかり解放モードに突入。まずはスタッフの皆様と焼き肉、皆日本語がわかるので馬鹿話しながら結構おもろい。程よくのみくい楽しいところで切り上げるいい飲み方。ホテルに帰って明日のお楽しみに備え、ほろ酔い加減でとっとと寝る

 

起床は朝四時半、のそのそとド素人御用達ナイキ・ストラクチャー17を装備、5時半ホテル発。漢江公園を目指す。盤浦大橋を目指し北に進むが、碁盤の目のように張り巡らされる交差点の全てに信号があり、また地下道を通らないと道路の向こう側へ行けないようなところも多い。ジョギングとしては結構難儀し4.5kmの道のりを30分ほどかけて走るというか移動する

 

なんとか6時前に漢江広場へ着、ちょうど日が昇ってきて、漢江の夜明けぜよ。となぜか坂本龍馬風に一人ゴチてみる。漢江広場は、サイクリングコースやアウトドアアスレチックジムなど設置されたソウル市民憩いの場、平日の朝6時なので余り人はいない。ただし、その時間にしてはサイクリストが多い。ぶっちゃけサイクリングコースは、しっかり舗装されまた、自転車専用道路として歩行者と分離されている

 

ぶっちゃけ、多摩川サイクリングロードの10倍はすばらしい。 漢江越しに高層アパート群と南山、ソウルタワーというなかなかステキな眺望。湿度の低い朝の空気の中、ジョギングコースとしてはなかなかクオリティが高い。でも、府中多摩川風の道のようにランナーや犬を散歩させる人たちでごった返すことはなくほどよく閑散としている。これも評価ポイント1を加点しておく。川沿いをトボトボ、2kmほど先の港南大橋向かう。植込みのコスモスの花が過ぎ去る夏を教えてくれるコースをたどりながら、ゴミもなくよく維持管理されている。ここでまた評価ポイント追加、今日はなんとなくポジティブな加点主義者。よくサイクリストを観察していると、娘さんたちはよくマスクをしている。日焼け防止には時間が早過ぎるしPM2.5よけなんだろうか?アホみたいにぶっ飛ばすヤツもいないし。

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皆適度に肩の力が抜けておりマウンテンバイクの比率が5割を超えている。うらやましい。 そして屋外ジムを発見。これはなかなか日本では見かけられないがなんか規制とかあるのだろうか。ジョギングの前後にちょちょっと屋外環境でトレーニングとかストレッチできるのが最高なんだが。屋内ジムで10インチの液晶画面のどうでもいい取ってつけたような映像を見ながら黙々と最新型のランニングマシーンの上を流れるベルトコンベアーに合わせ走っているとオレはハムスターかと虚しくなってしまう。エアコンの効いた室内よりもやっぱ体を動かすのは屋外がいい。そして屋外ジムは、自重を利用したものが多く無理して過負荷で関節を痛めてしまうことが少ないのが調度良いのだ。 港南大橋からは江南大路を南へ向かう

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ほぼ高速道路、歩行者はおまけ程度で考えられており、横断歩道を探すのに右往左往する。難所を抜けると、南北に伸びる道路沿いに高層ビル群がそしてもう7時半になっており幅5mはある広い歩道を韓国のエリーツや、キャリアウーマン達が勤務先へ向かっている。そんな中、必死こいてゼイゼイ言いながらジョギングしているヘンタイはオレ一人。みんなサムソンの馬鹿でかい端末を片手に歩きスマホ。オメーら前見て歩けよラインとか、フェイスブックとか、ツイッターとか後でまとめてやれよな。と珍しく怒りがこみ上げるが、そんな中ジョギングしようとする酔狂なオノボリのオレも似たようなもんか?と気持よく水に流しておく。 江南駅でこれがガンナムスタイルの聖地か今あのオッサンどうしているんだろうか?と中途半端な知識で写真を撮りまくるオレを見下すエリーツ達の目線が痛い。ここからはテヘラン路を5分ほど走ってホテル帰着

 

来てみると意外と興味深い街ではあるが、取り立ててわざわざ旅行して見るほどの興味を惹かない。エイジアの近代都市。どこもいっしょじゃん、という感じは正直ある。なんだろう、なんとなくオレにとっては、名古屋。都会だし、産業も発達しそれなりに特徴のある美味しい物もある。でも良くも悪くもキンタロー飴的で強烈なオーラがないんだよな。棚ボタで仕事ついでにちょちょっと、観光するくらいがちょうどいいんだろうなあ

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初めての海外旅行でオドオドしているオレと、肩の力抜けまくりで、ありがとうを意味するカムサハムニダの一言のみで韓国旅行を横着にこなす今のオレがソウルの街角で邂逅したらお互いどう思うんだろうか。オレはなりたかったオレに近づいているのだろうか。多分、昔のオレは、今のオレに対して、なんだこの冴えねーオッサン。こういう奴にはなりたくねえな。シネヨ。とちらっとガンを飛ばすだけだろうし、今のオレは、なんだこのクソガキ。とっとと失せろ。そんな簡単に死ねるかボケ。くらいにしか思わないだろう。ゼッテー、意気投合し韓国屋台で肩を並べ焼酎飲みながら、熱い夢や、クドクド若い衆に人生の能書きを垂れるような美しいお話にはならないだろう。まぁ、なりたかったオレになっているか、そもそも、なりたいオレってあったのかどうかも覚えていないが。三つ子の魂百まで。多分、中身はあんまり変わってないんだろうなということを再確認した

 

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韓国語が一ミリもわかんない俺でも理解できる秀逸な広告

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ホテルのエアコン使い方わからず超難儀