銀輪日報

本と自転車旅とB級グルメ

ディドゥロ大通り (160604)

「ムシュ、オレにもタバコ一本分けてくれよ」と通りの向こうから来たハタチそこそこのチンピラ二名に声をかけられた。

f:id:trail7:20201117041131j:plain

夜明け前のパリ、リオン駅前。肌寒く今にも泣き出しそうなどんよりとした空のもと俺はナイキのスニーカーに短パンとT-シャツ。アメリカンツーリストファッション、つまり明らかにオノボリ、またの名をカモネギという格好で散歩していた。土曜の早朝、チンピラどもは夜通し飲み明かし、ちょうどいいところにヌケ作がやって来たという感じなのだろう。俺は一瞬躊躇するもまあいいかと黙ってタバコを差し出した。火をつけてやると、お礼とばかりにハイタッチの格好で右手を高く上げた。なんだよお前?と思いながらもつられてハイタッチに応じようと俺も合わせるように右手を高くあげた。その瞬間、ヤツの左手は俺のズボンの右ポケットにさりげなく、しかし素早く伸びてきた。ヤベ、スリだ!と気づきあわててその手をはたいた。その勢いで斜に構えた俺とチンピラが対峙する構図が出来上がった。緊張の北緯38度。板門店。一触即発の事態におちいった。

f:id:trail7:20201117041046j:plain

俺は共産主義者であるが平和主義志向であり近接戦闘技術は体得していない。この場をどう切り抜けようか。犬がワンワン吠えて来たら逃げるより威圧した方がうまくいくことを思い出した。チキンハートの心臓がドクドク脈打つ。俺は若干腰を沈め対決姿勢を見せた。体格ではこちらがふた回り勝る。数秒のにらみ合いの後、チンピラのツレが「もういこうぜ」と政治介入を行い戦闘状態に入ることなく冷戦は終結した。俺はドキドキがおさまらないままその場を離れた。

f:id:trail7:20201117041002j:plain

ゴミが散らかりションベンくさい通りを歩きながら、もしカモられていたら終わってたな。パスポートも財布もぞんざいにポケットに突っ込んでただけだし。下手コケば全財産失い俺もコキタナイパリでもの乞いするハメになってたな。軒先でだらしなく寝ているオッサンと同じじゃないかと少し普段の生活態度を反省した。フランス渡航時のデフコンをレベル3に切り替えた。そして魅惑的なスリの都をトボトボと氾濫するセーヌ川見物に向かった。そんな俺もサイテー野郎だ

f:id:trail7:20201117041201j:plain

朝から熱心なフォトグラファー達

f:id:trail7:20201117041312j:plain

街灯って水没しても点灯するんだな?無駄にスゲエ

f:id:trail7:20201117041438j:plain

よおこんなところに一晩駐するなぁ

f:id:trail7:20201117041535j:plain

絶対盗られたくないという強い意志を感じた

f:id:trail7:20201117041601j:plain

f:id:trail7:20201117041608j:plain

f:id:trail7:20201117041637j:plain

f:id:trail7:20201117041644j:plain

f:id:trail7:20201117041656j:plain