銀輪日報

本と自転車旅とB級グルメ

浦和 0 - 長崎 0 (180805)

「えんどぉー、えぃえぃえぃえぃえぃっ」新宿FACEの特設ビアガーデンリングに大喜びの観客の声援が木霊した。演出?やらせ?上等だぜと言わんばかりの場外乱闘に大袈裟な大技が炸裂した

 

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デイ・ワン

 

五反田の場末のキャバクラで飲んだ安酒トリスウイスキーのせいで頭がガンガンする。居眠り運転で事故ったトラックが横転し一車線閉鎖された川崎街道で経由で帰宅したのが3時半。ギラギラした朝日に炙られ6時過ぎには目が覚めてしまった。結局二度寝することを諦め薄っぺらい味のインスタントコーヒーを啜り「小説フェルマーの最終定理」をリュックに入れ街へ出かけた

 

非優等生タイプの残念なドイツ人と共にアサイチに俺なりのコダワリであえて京急線経由で川崎に向かった。ねらい通り外国人専用のお風呂に諭吉握らせ押し込むことに成功したが、日本人はお断りで入店禁止。んだよぉと思いつつも用心棒のゴツい黒人のあんちゃんにゴネる勇気もなく、オレはオレで近くをハシゴしながら見学無料の写真を眺め2件目で70分一本勝負のマットに沈んだ。 心身ともにサッパリしいかに素晴らしい体験だったという満足げな感想に「だろ?」と煽りつつ馬鹿話しながら涼しげにくわえタバコでセブンスターを吹かしながら足取り軽く歩き始めた途端に小腹すいてきた

 

南蛮人御用達の一蘭でラーメンを食べ店を出ると川崎山王祭りにでくわし神輿の渡御をしばらく楽しんだ。その後は定番の渋谷。ハチ公や交差点、センター街でオノボリらしく記念写真を撮りまくった。ただそれだけだが、それなりに観光気分になれる街の雰囲気や魅力に気付いた。折角なのでウェブで調べておいた事務所を探したがその雑居ビルにその看板はない。確かに住所はここであってるはずなんだけどなぁと不振に思いながら恐る恐る覗いてみると人当たりの良さそうなアンちゃんがトーキョー・ヘンタイ・クラブはここだよと声をかけてくれた

 

フィリピン訛りの流暢な英語の説明を聞いてみるといわゆるデリヘル。コンピュータのスクリーンにジェシカやらグレースとかの名前で日本人売春婦のプロフィールが所狭しと映し出されていた。最後に何処から来たのと問われ正直に日本人だと答えるとあーゴメン、日本人のお客はお断りとのこと。それを口実にそーなの残念だなぁと言いつつじゃあねと無事その場を離れた

 

熱中症予防のためフーターズに入り特大サイズの生ビールを注文した。そそぎかたが下手すぎ泡だらけで3分の2くらいしか入ってないし、明らかに2つのマグに入っている量が全然違う。よくこんなの出すよなとビンボーくさい見た目に飲む前から大笑い。これドイツだったら大クレームだぜ、でも雑なアメリカだからしょうがないよなと旧枢軸国の国民同士気持ちよく乾杯した

 

ぴちぴちのシャツにホットパンツでセクシーに決めているが何となくダサい。やはりチップで稼ぐ文化じゃないのと肩の力が抜けた明るさと健康的な笑顔がないのがぎこちなく見えるんだろう。随分前に行ったロサンゼルス郊外のデニーズのウエイトレスの小娘の方がよっぽど魅力的だぜ。しかしながら野郎同士で来るには良い暇つぶしになりあのカウンターの中のコいいなとか鼻の下を伸ばしつつ何杯か飲み干した

 

激混みの歌舞伎町を抜け、「戦うビアガーデン2018」を観戦。まずはリングアナと出場選手による乾杯に続き前座の試合が始まった。明らかにやらせ、シナリオ通りで予定調和の展開とセリフ回しのわかりやすい演出がくだらなすぎて逆に大ウケ。ゲイvs小学5年生とそのお兄ちゃんというぶっ飛んだ設定のタッグマッチとかリングサイドを盛り上げるための場外乱闘。八百長?やらせ?そんなの上等だぜという開き直った演出に興行師としてのプロ魂を感じた。ただ10試合近く3時間の長丁場となるとはっきり言って飽きてくる。筋書きのないガチ勝負が見たくなってくる

 

サクッとラーメンで締めてそそくさと帰りたいところだが、今日は武士の情けでドイツ料理を食わしてやるぜとお店をのぞいたらバイエルン料理屋だった。日本でいう関西風だ。まぁでも満面の笑みで嬉しそうだから来た甲斐があった。「ドイツ料理と言ったらアイスバインしかないっしょ。お前はこれを食え、俺はやっぱ地元のフランクフルト・ソーセージね」と活き活きと得意げに注文してるそばで俺もソーセージがいいなと思いつつも、ここで無粋なことはしてはいけないと自らを戒め「いいね。グッドチョイス」だと忖度しておいた

 

クソ重たい1リットルサイズのビールが提供されたが、ドイツ製のマグに刻印された最低規定量に若干足りていない。「ちょっと文句言ってこいよ」とけしかけるが「郷に入りては郷に従えだ。それよりプロースト」とスルーされてしまった。 しばらくして出てきたメインディッシュは馬鹿でかい骨太の角煮。味付けは醤油抜きの塩味。デカい皿にデカい肉の塊が無造作に置いてあるだけの狩猟民族らしいワイルドで雑な料理だ。これ一人分?と思いながら、農耕民族の俺には重たすぎるぜ、うぅと胸焼けを抑えつつ今日5リットル近く飲んでいるビールでなんとか流し込み完食した「塩味が効いててビールにあってうまいね」と余裕のコメントしておいた。俺もなかなか役者やのうと少しだけ自分のことを誇りに思った

 

帰りしな風俗無料相談所を冷やかしに覗き馬鹿高い外国人向けの料金表を見せられた。まだまだ人通りの多い新宿の雑踏を歩きながら、どこでも外国人ぼったくり価格ってあるんだなぁ。何をするにも、いかに現地価格での支払いに近づけられるかが旅慣れた上級者だというウブなヒエラルキーがあったよなぁと遠い昔に想いを馳せた

 

デイ・ツー

 

電車を乗り継ぎ奥多摩川井駅に降りたった。今日は御岳渓谷でラフティング。ぶっちゃけ若者の若者による若者のためのプチ冒険風お水遊びだ。場違いに女性陣はビキニでキメる。折角だからもっとキワドイやつにしてくれ。しかし外国人連れのゴツいおっさん二人組というのも相当場違いだった。ラフティングは基本下り系スポーツ、スキーなりマウンテンバイクと同じで最適なラインを重力に任せ下っていくのは同じだ。そのキモのラインどりは船頭さんがうまくコントロールしてくれる。自分の乗り物を自身でコントロールする楽しみがないのは少し残念だ

 

ツアーの途中ボートを止め、小さな滝で水に打たれるポーズでの写真撮影やボートをひっくり返してウォータースライダーにしたり、岩場からドボンと飛び込むというくだらないお遊び要素があり若者達は無邪気に大いに楽しんでいた。オレもオメエらとあんまり変わんねえよと思っていたが、そうじゃねえんだなぁと当たり前のことながらしみじみしてしまった。 ジャックと名乗る主催者のリーダーによる軽妙な語り口でのガイドを聴きながらバスで出発地点へ戻った。若者らしいフレンドリーさと楽しさそして接客という立場を節度よくバランスした台本とセリフまわしに関心した

 

基本的にはお遊びの域を出ないのだが、東京自慢の奥多摩の自然の中でお気楽リクリエーションも悪くない。この酷暑の中、普段車生活の外国人を都内観光歩かせるのも無粋だ。10年をかけた丹念な取材ののち上梓されたノーマン夫妻の名著「バターン死の行進」を読了したばかりの俺は歴史に学べる賢者になりたいものだと我が身を律した

 

そして日本の誇るワールドクラスの専用スタジアム、埼玉アリーナへ向かった。サッカーが国技のドイツ人を連れて行くのに味スタの2部リーグじゃ失礼すぎる。しかも対戦カードはファーレン長崎という聞いたことのないチームで順位的には底の方。絶対の勝利を確信しチケットを予約しておいた。タオルマフラー、ビール、唐揚げという定番の三点セットを買い込み浦和レッズはニワカサポーターを2人増やした

 

試合前から観客席は赤に染まりさすが1部リーグ雰囲気は最高だ。しかし相手がボール持っただけで大ブーイングとかサポーターの民度は低い。チャントの歌詞カードも配布しておらずどう応援すれば良いかよく分からん。アウェイに来た居心地の悪さとぎこちなさを感じた。比べてみるとヴェルディサポーターの品の良さや盛り上げようとする頑張りを改めて評価した。今度サポーター活動費カンパしておこう

 

試合内容は大味でグダグダ、そして最低のスコアレスドロー。おいおいおいおい。なんだそれ?タオルマフラーを振り回す機会も与えられず、クソ暑い中お地蔵さんのように座っていただけ。ぐったりと来た。気を利かせてあえて見送ったヴェルディはホームで大宮に2-1で勝利、4位浮上。歓喜のラインダンスでさぞかし盛り上ったことだろう。 ロシアで得点入れてた日本人、たしかドイツの2部リーグで頑張ってたぜ。とか言われ国力の差を感じた。無謀にも釈迦に説法を試みたが、しどろもどろで説法にもなっていないという不甲斐ない結果にぐったりときた

 

最終日

 

港区の日本自動車連盟で聞いてみると国際運転免許証にはいくつかの種類がありそれぞれ通用する国々のグループが異なるんだと。相変わらず冴えない頭で理解を試みるとスター・アライアンスとワン・ワールドの違いと似たようなもんだろうと無理矢理自分を納得させた。そんなの知らねーよと役人相手にゴネてもしょうがない。大人しく要件である外国発行免許証の日本語訳を頼んだ。この手のお役所仕事には珍しく3時間ほどで出来上がるということ。助かるぜ

 

その空白時間を最大限に活用すべくBダッシュ築地市場を冷やかしに行き、激ウマの海鮮丼ランチだ。余勢を駆って定番のメイドカフェまで足を伸ばしメイドのリツカちゃんと共に萌え萌えキューンと決して届くことのない愛を注入し甘ったるい抹茶ミルクティーを一気に飲み干した。そしてまたダッシュで舞い戻り頼んでおいた書類を回収し、また秋葉原へ急行、ギリチョンセーフ間に合った

 

相棒はマリオを選択、だったらオレは当然ルイージだろと選んだコスチュームのサイズが合わなくてキツすぎる。今に始まった事ではないまあいいや。 「これがシートベルトだけど、こんなのが役に立つとは思わないから装着してもしなくてもどっちでもいいよ」とスカしたフランス人ツアーガイドのジョン君がざっくばらんに通りいっぺんの説明してくれる

 

アクセルを踏み込んでみると低い目線で体感スピード抜群だ。クイックなステアリングに懸架装置が省略された足回りで路面状況がダイレクトに乗り手に伝わってくる。最初はビビるがすぐに慣れて逆に楽しくなってくる。もろに横Gがかかるコーナーリングで体を内側に傾け交差点を突破し気分はまさにマリオカート。めちゃ楽しい。道行く観光客や通行人が手を降ってくれたり写真を撮ったり注目度抜群だ。やっぱマリオが人気度ナンバーワンだ

 

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上野、浅草を駆け抜けスカイツリーで小休憩と写真撮影。そのご両国、日本橋、東京駅、皇居前、銀座を抜けて秋葉原に戻るという南蛮人ウケしそうなよく練られたコースだ。楽しいけれどもぶっちゃけ危ねえ。非日常的な体験に運転感覚が麻痺しそうだ。トロい浮かれポンチが乗った日には絶対事故るヌケ作がでるはずだ。たまたま遭遇したら近づかんほうがいい

 

そして月曜日の帰宅ラッシュの半蔵門線で家路に向かった。ぎゅうぎゅう詰めに混み合う電車の中、いつもの日常がスッと近づいてきた。この週末の小さな冒険譚ももうすぐ終わりだ。しかしこのバカ話を酒の肴にこれから先何十リットルものビールとシュナップスを飲まされ続けて行くことになるのだろう。やってられないぜ。 終着駅は雨がパラついていた。傘をさすのもめんどくさくなってそのまま濡れながらあるき出した。別れ際に渡されたくそ重たい紙袋を覗いてみると陶器に入ったジンと、名門リヒャールツ社製ポケットツール、そして自慢のフランクフルト・ソーセージの缶詰が入っていた

 

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