2019.10.07
憧れの川上牧丘林道と中津川林道のゴキゲン、ロングダート林道を楽しんだ。その翌日は山行の予備日として有給をとってあった。僕は充実感で幸せな気分で頑張ってくれた機材の清掃・点検を行った。少し心配していたとおりタイヤにダメージが見つかった。折角なのでこれもライド・レポートの一部としてまとめておこう。
タイヤの構造
タイヤの構造は大きく分けて3つだ。ビード、カーカス、トレッド。ビードは主にピアノ線の束で構成されており、タイヤをリムにしっかり固定する機能を持つ
カーカスはタイヤの骨格で、ナイロン製んで編まれゴムで皮膜されている。荷重や衝撃、空気圧に耐える構造材だ。タイヤの品質要求に従い繊維密度を変えている
そしてトレッド。タイヤの外皮で路面に直接接触する。トレッドパターンが刻まれておりグリップ、摩耗に大きく関係する重要な部分だ。そしてシュワルベの耐パンクタイヤにはカーカスとトレッドの間に3~5mm厚の耐パンクベルト層が設けられている。耐パンク性は良くなるがその分コギが重くなることとトレードオフの関係にある
添加物について
カーレースでコンパウンドという言葉を聞いたことがあるかもしれない。これは混合物のこと。天然や合成ゴムにカーボンブラックという炭素粉末を添加しタイヤ強度を向上させる。タイヤが黒いのはこのカーボンブラックによるものだ
そして潤滑剤。コンパウンドの柔軟性を保つために配合されている。この潤滑剤は紫外線や熱により徐々に劣化、抜けていく。そのため経年劣化でタイヤが固くなったりヒビが入ったりするわけだ。この配合成分、比率。すなわち塩コショウ加減が各メーカー秘伝のレシピだ
タイヤの寿命
タイヤの寿命は一般的に2000~5000kmと言われる。マラソンシリーズは6000~12000kmと長寿命だ。大抵はトレッド層の摩耗により寿命が尽きるが、サイドカットによるカーカス部へのダメージによる寿命も多い
タイヤの機能
タイヤの機能は、荷重支持、振動・制動、進路保持、衝撃吸収の4つ。路面と接触する唯一の部分で自転車に入力されるすべてのエレルギーはタイヤを介し路面に伝えられ加速、減速、コーナーリングが行われる。自転車の性能を決定づける重要部品で僕らはタイヤに命を預けているとも言える
そのため特に悪路を走行した後は、タイヤをよく点検したほうが良い。ざっと水で洗って泥や砂を落とす。その後は濡れ雑巾で残った泥汚れを丁寧に拭き取りながら清掃するとダメージが見つかりやすい
今回の過酷なダート走行によるダメージが見つかった。10mmにも満たないが耐パンク層が見える切れ込みを発見。幸いカーカス層には至らないダメージのようで補修して経過観察することにした
加硫接着剤で補修
行きつけのホムセンで加硫接着剤を購入した。製品ラベルを読むと
種類 溶剤形加硫接着剤
成分 天然ゴム他7%、有機溶剤(93%)ゴム揮発ヘプタン
用途 ゴム接着用(加硫接着剤)
※この「他」というのが代々続く門外不出の秘伝のたれのレシピだ
加硫(かりゅう)とは、架橋反応の一種で、ゴム系の原材料を加工する際に、弾性限界を大きくするために硫黄などを加える工程である。何がなんだかよくわからん。タイヤに使われる合成ゴム生産量の80%を占めるスチレンブタジエンゴムの化学構造式は次の通り、これが長く連なって高分子化している。ようは麺のように伸びている
[-(CH2-CH=CH-CH2)-(CH2-CH)-]n
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ベンゼン環
こいつに塩コショウの代わりに硫黄Sで味付けすると二重結合部に作用し下記のような架橋結合する。
|
[-(CH2-CH-CH-CH2)-(CH2-CH)-]n
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S ベンゼン環
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S 架橋結合
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S
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[-(CH2-CH-CH-CH2)-(CH2-CH)-]n
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ベンゼン環
硫黄Sの結合は炭素同士の結合に比べ自由度があり、自由に動くことができる
高分子の鎖はスパゲッティナポリタンのように通常はぐちゃぐちゃに不規則に絡まっている。これに左右から引っ張って力を加えてみると麺は規則的に配列される(エントロピーが減少する)。でもエントロピー増大の法則によるエントロピー弾性という性質のため元のぐちゃぐちゃの状態に戻ろうとするのがゴムが伸び縮みする理由だ。ミクロで見るとそれは各分子の乱雑な熱運動によるものだ
ナンノコッチャますますよくわからんが、スパゲッティナポリタンを美味しくいただくためには、トマトソースをぐちゃぐちゃとよく絡めることでより美味しくなるのが自然の法則であるということと同じことなんだろうと無理やり理解しておくといい
本題に戻ろう。加硫接着剤は化学変化を利用した接着ということでド素人には響きがいい。実際はタイヤの合成時に加えられる硫黄ですでに架橋結合しているわけだが、残りの二重結合の量なんてわからん。なので実際には気休めかもしれない。そしてあまり加硫させると不必要に硬化してしまう。さじ加減が難しい
それでも創業100年を超える老舗のマルニ工業謹製の接着剤、しかも誇り高きメイド・イン・ジャパンだ。とりあえず期待に胸を膨らませ、き裂部に塗り込みしばらく圧着して修理した。おそらくこれで問題ないが耐久性については経過観察後、点検・評価を行い。問題確認時には別途報告書をまとめるつもりだ
参考サイト
地味な名門マルニ工業株式会社のホームページ
株式会社ブリヂストン - タイヤのキホン タイヤの材料