銀輪日報

本と自転車旅とB級グルメ

週末の小さな大冒険その3(大弛峠~金峰山~中津川林道)

2019.10.05-06 

 

 

山小屋の朝は早い。朝食は5時半。ご飯を食べて皆へ挨拶し早々に出発した。東の空のみ青空が垣間見えるが、ほかの方角は雨雲だ。天候は微妙。神様次第。僕はカーキ色のカーゴパンツにコットンのブラックTシャツとマウンテンバイカー風にワイルドにキメた。


しかし僕を迎え撃つ川上牧丘林道のダートはもっとワイルドだった。ハードグラベルの路面は崩れ落ちた岩だらけ。走行ラインが全然読めない。

 

 

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無理ゲー

 

 

峠から数キロは聞きしに勝る悪路。バカでかい石がゴロゴロ、ガレまくり。多摩川の河原みたい。僕のしょぼいテクと街乗りマウンテンバイクでは完全に手が余る。サドルを思いっきり下げて、半ベソをかきながらおっかなびっくり少しずつ下っていく。


急ぐ必要はない。安全第一。

 

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ピンと張りつめた朝の冷たい空気に息が白くなる。カモシカの親子が横切っていく。遠くジェット機の音が聞こえるくらいの静寂に包まれる。完全に僕だけの世界だ。贅沢な時間だ。

 

難所を過ぎ、ようやくミディアム~ヘビーグラベルと言えるような路面に落ち着いてきた。少しずつ慣れてきて大分乗れるようになってきた。ちょっと怖いが美しい景色にテクニカルなダウンヒル。楽しい。

 

 

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と油断したとたん、前輪を取られ派手に落車。ラッキーなことに体にも機材にも深刻なダメージはなし。ホント神様に感謝した。

 

標高を下げるにつれガスが濃くなってきた。要は雲の上から雲の中に突入。静寂で美しく幻想的な林道のコーナーを次々に駆け抜ける。

 

 

1時間強でダートはクリア、橋を渡るとターマック。ちょっとほっとした。

 


東股沢の清流が美しく、ここで大休止した。泥だらけになった機材や服をすこしきれいにし、冷たい水で顔や手を洗った。膝からは血が出ていたが、擦り傷だからそのままでも大丈夫だろう。

 

 

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山道が終わり道路沿いの畑では残り少ない野菜の収穫を行っていた。収穫期も終盤で冬の準備がはじまる気配を感じた。
気づいてみると家や車やトラクターがみんな大きい。裕福な農村だ。日本一のレタス王国川上村の苦労と実力を垣間見た。


香ばしい堆肥のにおいがする見晴らしのいい開けた畑の真ん中で小休止。夏に来たらさぞかしさわやかな場所であろう。

 

あらかじめスマホにダウンロードしておいた川上村観光ガイドを確認して何か興味深いところがないか探した。特に前もって計画していなかったが村の豊かさにこの土地への興味がわいた。電波はつながるものの4Gの表示はない。昨日からデジタル・デトックス状態だ。たまにはいい。旅に集中できる。

 

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一瞬素通りしかかったが2度見した

 

村の中心はここから12kmほど西の信濃川上駅周辺部のようだ。往復・観光を入れると1時間半。しかし、林業総合センター、大深山遺跡、郷土資料館と正直パットしない。まだ8時前で開館していないだろうし。

 

僕は予定通り三国峠を目指すことに決めた。県道68号線にそって進むとヤマザキショップがあった!道中はじめてのそして唯一のコンビニだ。さすがに品揃えは日持ちのするものに限られており、弁当おにぎり、菓子パンというような定番アイテムはなかった。コーヒーを買って一服した。

 

 

長野からの三国峠へのアプローチはターマック。時折モトクロスライダーとすれ違う程度の閑散とした山道だ。ヤマからおりてだいぶん暑くなってきたので、短パンとポリエステルのランニング用シャツに着替えなおしヒルクライムに取り組んだ。

 

 

9時22分とうとう三国峠を踏んだ。稜線に切り込みを入れるように切通しの峠。これぞ峠という感じだ。振り向くと川上村が遠く眼下に見える。ずいぶん上ったもんだ。

 

峠の向こうの秩父側にあこがれのあの看板「三国峠、標高1740m」があった。その横には、大書きで「このさき18km悪路注意。未舗装」との注意書きがあった。望むところよ!

 

 

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再度カーゴパンツに着替えなおし出発。ライト~ミディアムグラベルの快適なダート道。楽しい!驚くべきことに18kmずっと下り。登り返しの必要がない。本当に楽しい第一級のルートだ。ターマックに抜けてからも中津川渓谷沿いを右に左に下り基調で高速走行を楽しめる。

 

 

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いつの間にか大御所シェリルクロウ姐さんの骨太大ヒットナンバー、エブリディ・イズ・ア・ワインディングロードを口ずさむご機嫌な快走路だ。ややアブナイ人になりつつあった。

 

 

 


途中、滝沢ダムダムカードをゲット。その先のループ橋の雷電廿六木橋(らいでんとどろきばし)で土木技術に驚嘆した。圧巻の風景だ。

 

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三峰口駅で小一時間電車を待った。駅前の食堂で缶ビールで祝杯を挙げた。充実感と心地よい疲れ、そしてビールの酔いでウトウトした。僕の乗る西武秩父線は単線をガタゴトのんびりと飯能へ向かっていた。週末の小さな、しかし僕にとっての大冒険は終わりに近づいた。

 

 

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萌系。修行が足りず僕はまだ覚醒できていないが、多様な文化は素晴らしいことだ