2019.09.29
ハインリッヒの法則
1:29:300。米トラベラー保険会社調査部の安全技師だったハインリッヒが発見した重大事故に関する法則だ。「1件の重大事故の背後には、29件の軽微な事故、そしてさらに事故に至らない300件の異常が隠されている」というものだ
1931年に発表された論文に記載されたこの法則は、その後安全管理の普遍的な指針として世界中に広まった。国内ではヒヤリハットの法則とも呼ばれる
機材の保守管理
機材の保守管理は大きく2つに分類される。予防保全と事後保全。予防保全とはあらかじめ計画された点検・保守を行い稼働中の故障や不具合を防止し機材のダウンタイム(障害発生による稼働停止時間)や性能劣化による損失を軽減するための活動だ
一方、事後保全は故障や不具合が発生したときに、その原因を特定し修理を行うことだ
予防保全は、まだ交換の必要のない部品を交換することでコスト的に高くつくことがある。故障した個所を修理・交換したほうが経済的合理性がある場合がある。理屈はわかるがその匙加減が実際問題難しいところだ
サイクリストの業務内容で検証してみると特に遠征時やレース中など時間がより貴重となる場合機材のダウンタイムは直接的な損失につながる。また性能劣化による変速不良や異音の発生は搭乗者の精神衛生上の負担となる。これらのことから予防保全を計画する意義はある
機材の劣化
機材の劣化は、次の3つのベクトルに向かって進む。「ゆるむ。減る。よごれる」。ねじ・ボルト・ワイヤが「ゆるむ」、潤滑油、ブレーキパッド、タイヤの空気が「減る」、そして泥やほこり、油脂類で「よごれる」
そのため保守運用は「締める」、不足分を「つぎ足す」、そして「清掃する」という方向で実施する。快適なライド・ライフを送るためには月一度はチェックリストに従い点検・整備を行うべきだ。そして半年~1年に一度はオーバーホールすることが理想的だ
取組んでみると適切な治工具と知識さえあればほとんどは自分の手で整備や修理を行うことができる。プロショップのスタッフにはない自分の機材に対する愛着や思い入れから時間がかかってもじっくりと作業を行うことができるのが利点だ
切る、削る、ねじの溝(タップ)を切るというような「加工」を伴う作業はプロショップに任せたほうがよいかもしれない。これは設備投資にたいする利益の回収(ROI)が十分に望めないであろうこと、また不慣れな素人作業を失敗し機材、部品の損失リスクを定量評価すると、経済的負担が一般サイクリストにとって重たいためだ
ブレーキの交換とチェーン周りの清掃
今週末はブレーキバッドとワイヤの交換およびチェーン周りの清掃を実施した。必要なモノは交換用の部品と工具、油脂類だ。そして石鹸とポータブルラジオも忘れてはならない。近くの公園のお気に入りの場所まで出かけていきラジオを聴きながらじっくり作業に取り組むというのはサイクリストにとって至福のひとときであろう
ブレーキパッドは前輪の方が負担が大きく減りが早い。そのため前輪についていた使いかけのパッドを早めに後輪に付け替え、新品を前輪に取り付けるというローテーションが経済的だ
ブレーキワイヤはサビとかほつれが出てきたら交換だ。ホーザンのワイヤーカッターをつかうとスパッと気持ちよく切れる。ここをケチってニッパーとかで代用を試みると不必要にワイヤがほつれて悲しい思いをする。あまり使うことはなく購入をためらうがぜひとも手に入れておきたいアイテムだ
ワイヤ端は半田で処理するのがツウっぽいが、ニワカな僕はワイヤキャップを接着剤で固定してしまう。キャップをつぶして(カシメて)固定する方法もあるが固着力が弱く、またワイヤのほつれの原因にもなってしまう。ちなみにワイヤキャップはガスコンロで加熱すれば簡単にはずれ再利用が可能になる。地球環境面でも優しい方法だ
チェーンの清掃は厄介。油断してると手や服が汚れるし、キリがないし。通常の定期点検レベルではウエスで丁寧にふき取るくらいで我慢しておく。だんだんとプレートの内側に汚れがたまってきて我慢の限界近づいてきたら手間暇かけて大掃除してすっきりしたい
ミッシングリンク専用ペンチでチェーンを外す。カセットやチェーンリングにたっぷりとパーツクリーナーを吹きかけ汚れをとかし飛ばす。そのあとは丁寧に拭き掃除だ
チェーンはペットボトルにいれ、パーツクリーナーをたっぷり吹き付け数センチほどためる。そしてバーテンダーのように格好をつけて好きなだけシェイクする。するとクリーナーはすぐに真っ黒だ。またボトルを寝かせ優しく揺するように洗うという変化も効果的だ
アブナイのでカッターを使わずニッパーでボトルを切り開きチェーンを取り出す。廃液はほおっておけば揮発してしまう。几帳面な僕はピカピカになったチェーンをみてスッキリとした気分で狂喜し、もう一回洗いたいという欲求が湧いてくる。しかし実際は自己満足の世界だ。すぐに汚れてしまうのがチェーンの宿命。いいところで踏ん切りをつけよう
チェーンを付け直し、一コマ一コマに丁寧に潤滑油を注油していく。ちなみに中国語で加油は「がんばれ」という意味だ。仕上げにホコリや汚れがつきにくいよう不必要な油脂は丁寧に拭き取ってしまうことが大切だ
作業を終えピカピカのチェーンで家路に向かうことは銭湯からの帰り道のようにさっぱりと気分が良いものだ