2019.09.15 115.6km +2052m
季節が進む。のど越し爽やかな端麗辛口な朝の空気が日に日に美味しくなってきた。朝日溢れる多摩サイを西上した。丹沢山塊、奥武蔵山塊の稜線が黒く青空のもとくっきり浮かぶ。マウントフジもその勇姿をうっすらと浮かび上がらせる。サイクリング・シーズンの幕開けだ。早朝から多摩サイは思い思いのルートに向かう自転車乗り達が先を急いでいた。
僕は睦橋から五日市街道をたどった。武蔵五日市駅を左折し、槇原街道へ入った。そのまま進めば風光明媚な奥多摩周遊道路だ。まだ早い。僕は1504年創建の子生神社を左折し盆堀林道に取り付いた。暑い季節は過ぎ行き、静かな早朝の盆堀川原を訪れるのは僕だけだった。キリリと冷たい川の流れで顔を洗って一息ついた。進むにつれ林道は、落ち葉、枝、落石で荒れてきた。先週末の台風の直撃を思い出した。それでも僕は淡々と漕ぎ続けあっさりと入山峠にたどり付いた。そこからは夕焼け小焼けの里、恩方へ向かってのダウンヒル。路面は荒れていて気を使った。風張峠へ向かう前に少し足を削っておこうというのだろうか、ローディーと何台かすれ違った。おはようございますと爽やかに挨拶を交わした。
あっという間に上恩方まで降りた。左に向かえば陣馬街道から和田峠へ。右に向かえば醍醐林道経由で和田峠へ向かう。僕は右折した。醍醐川沿いにグイグイと高度を上げていく。一般車両は通行止めで俺様専用林道状態。途中、林業従事者達とご苦労さまです。と山を愛する者通しさわやかに挨拶を交わした。その後は静かな林道を淡々と高度を稼いだ。いつものお気に入りの場所で小休止し高尾~陣場の稜線を眺めながらお茶で一服し、史上最強のアスリート向けスポーツサプリメント、バナナを補給した。味、値段、携帯性はバツグン、しかもバイオデグレーダブルで環境にも優しい。バカ高いネスレのパワージェルで粋がってた頃が馬鹿らしいぜ。
和田峠からは一気に藤野側へダウンヒル。まだ時間が早いので余興とばかりラピュタ坂へ向かった。平均斜度20%、最大斜度30%というまさに壁。マウンテンバイクのワイドギアをインナーローにおとして慎重に取り付く、狭隘で悪路面の超激坂をトラクションコントロールに気を使いながら進んでいくがあえなくバランスを崩しいつもの通り途中で足付き。なぜか心が折れてしまう。今日も敗退だ。しかし折角なので自転車を押して最後まで登った。
その後は沢井川沿いの県道522号線をしばらく道なりに快走する。そして左手に栃谷川が見えたところで左折。林道栃谷坂沢線に突入する。ここから先は小泉政権が拍車をかけた自己責任の世界だ。弱い者たちがさらに弱いものを叩き続けた結果、為政者に好都合の現在の非寛容社会の一丁上がりだぜ。僕はマウンテンバイク乗りだから自己責任上等、てめえのケツは自分で拭くぜ。
快適な山岳路を登っていくとまさかの法面崩落。立ち往生してしまう。こういう場合は落ち着いてまずは状況評価だ。マウンテンバイク乗りは粘り強く諦めないのだ。マウンテンバイカーの初期設定値は「無理でも進む。どうしてもだめなら諦めることを認める」とDNAの塩基配列に書き込まれているのだ。おもむろにスマホを取り出し現在位置の確認。峠まで後数百メートル。ここまで来ておいて回れ右は勿体ない。じゃ、決まり。進むしかない。まずは偵察とルート工作を兼ねて自転車を放棄して一人で進んでみる。幸い30mほど進めば崩落箇所は突破できそうだ。現状滑落やさらなる崩落の可能性は低いと評価した。慎重に進路を見極めながらまずは単身で突破してみる。OK。そして戻ってチャリを担ぎ上げて時間をかけて慎重にクリアした。どんなもんだい。