銀輪日報

本と自転車旅とB級グルメ

ヴィスコンティ・ディ・モドローネ霊廟 カッサーゴ・ブリアンツァ 150605

北イタリアの村を散歩してその美しい佇まいに何気なく写真に収めた。後で調べてみるとミラノの貴族ヴィスコンティ・ディ・モドローネ家の霊廟だということだ。こういう邂逅も旅の面白さだ。

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エツェル博物館・テルアビブビーチ 191126

その主役が自ら自動車爆弾でブッ飛ばしたオスマン帝国時代の町役場。1932〜1948年にかけて活動したシオニスト過激派イルグン、またエツェルとも知られる危ない連中の博物館だ。

その信条は「武装ユダヤ人しかユダヤ人の国を守れない」「積極的な防衛」対英攻撃でホテルを爆破したり、アラブ人を虐殺したりやることがヤバい。当然国連や米英からテロリスト指定を食らう。

志願者は自らメンバーとのコネを作る必要ある。その後、セイフハウスの真っ暗な部屋で面接。ロマンや冒険心といった浮ついた心を拭い去る。その後4か月に及ぶイデオロギーの講習後ようやく他の構成員に紹介され武器や爆発物の扱いや攻撃戦術、諜報活動についても学ぶ。

メンバーは対ナチパルチザン、英陸軍、ハガナ出身者がおり多様な経験が組織にもたらされた。

1947〜1948年の第一次中東戦争で勝利しイスラエル建国後、多数の戦闘組織を取りまとめイスラエル国防軍が設立された。イルグンも最終的には吸収された。

攻撃予告で人々に避難する時間を与えたり、攻撃対象を政府施設に絞ったり、人の少ない安息日の攻撃で極力被害者を減らす配慮がなされたという評価もある。

テロリストグループと見做される組織の博物館は非常に珍しい。とはいえイスラエルの独立に一定の貢献を果たしたのも事実だ。六芒星の旗のもと、イスラエル陸軍の管理下で彼らの歴史や活動を紹介する博物館となった。

綺麗事だけでは終わらないイスラエル建国までの困難とその闘いだ。地中海の風に吹かれる開放的な広場にイルグン構成員の記名碑がある。現代の価値観で善悪の二面性だけでは評価しきれない複雑な歴史に必要とされたダークヒーロー達なのだ。

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SBB CFF FFS (170613)

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19世紀末、黄昏の清朝は欧米列強との不平等条約による半植民地化に苦しんでいた。圧倒的に不利な交渉条件下、慈禧太后すなわち西太后は『外政に携わるものは周囲からの誹謗中傷を覚悟しなければならない』と部下にハッパをかけた。百数十年後、僕はその言葉を自分に言い聞かせ自らを鼓舞した

 

村々を行商しメードインジャパンを買って給れと土下座外交を繰り広げた。予約しておいた特急列車が突然運休、ハンブルグ中央駅の13番ホームで途方にくれた。極東から時空を越え異文明間における通商の尖兵として望んだ職業とはいえ若干いろいろダルくなってきた。割りが合わない。そしてこの手の商売の原動力として一番必要な好奇心が枯渇し始めている

ツヴァイクラセ?」ドイツの片田舎のボブリンゲン駅の切符売り場のオヤジは連呼する。意味が全く分かんねえ。アタマの中に持ちうる教養と知識に高速インデックススキャンをかけた。J2ツエーゲン金沢の名前の由来を思い出した。そうかこいつは2等車でいいんだろ?と言いたいわけか。ビンゴ。ドイツ人にしては珍しく英語が通じない冴えないオヤジにヤーと適当に答えてみたら無事に2等車の切符が購入できた

 

田舎のイモオヤジだけど接客業だけあって人を見る目はあるんだなぁと感心しているうちに僕みたいな下等生物は1等車なんか乗れるわけないからそう聞いてきたことに気づいた。こちらはジャパニーズビジネスマンよろしくオフホワイトのシャツに赤いネクタイとダークスーツをゲルマン民族に肩を並べる長身にまといビシッとキメているのだが舐められたもんだ。抗鬱剤が必要だ

 

「ここへは旅行それとも仕事?」バーゼルマンハイム行のスイス連邦鉄道の6人掛けの個室で偶然居合わせたその妙齢の娘さんは、必死にノートパソコンに向かっている僕に聞いてきた。見りゃ分かんだろ?と一瞬毒づきかけたが、にこやかに微笑むこの娘さんは気を使って話しかけてくれたことを悟った。冷静に考えると見知らぬ娘さんが冴えない僕に話しかけてくれる機会などゼロだ。僕はこの人生最後のチャンスで出来る限り会話を継続させ彼女のことを知ってみようと決めた。アタマフル回転させて慎重に会話を組み立てた。途切れがちの話題をなんとか繋げていった

 

エミリというエチオピア系ドイツ人の娘さんは社会人3年目いっぱしの建築家だ。物価がバカ高いバーゼルでの暮らしはカツカツだが、近隣諸国からの移民で人口が増加しているスイスでの建築需要は高く彼女の仕事も繁盛している。建築制限が多く高額で狭い土地に如何に快適で魅力的な住空間を設計するかというのが腕の見せどころ。行ったことはないけど日本の著名建築家の作品も大いに勉強になる。結果が何十年も残るから遣り甲斐がある仕事とても気に入っている。今日は2週間の休みを取って生まれ育ったフランクフルトに住む両親に会いに行くの。エチオピアの親戚のところにも何回か行った。物質的な豊かさは劣るが、のんびりと楽しげで素敵なところ。どっちが幸せなんだろう。是非遊びに行ってみて、きっと気にいるわ。

 

僕は極力聴き手に回った。黒人とこんなに話ししたのは始めてだ。不自然に見つめすぎないように気をつけながら注意深く観察してみて見るとストレートの長い髪に目鼻立ちもはっきりしたやさしい小顔でなかなか綺麗だ。乗り換えの時間が近づいてきた。身支度を整え席を立った。僕は「どうもありがとう。楽しい時間を過ごせたよ。道中気を付けて、またね」と丁寧にお礼を述べた。彼女は「わたしも。ありがとう。ボンボヤージュ」と素敵な笑顔で答えてくれた

 

快晴のバーデンの空は初夏の陽気だ。乾いた風が心地いい。誰もいないプラットホームの端に立ち、乗り継ぎの在来線Sバーンを待ちながらまだ行ったことのないアフリカに想いを馳せた

スペイン陸軍ブルーチ基地一般公開日 150607

雲ひとつなく晴れ渡り陽の光が溢れるカタルーニャの空、乾燥した風がさらっと気持ち良く快適だ。バルセロナの大学地区に駐屯する陸軍部隊の一般公開日を目ざとく見つけ訪問した

 

基地内の一角にティーグレ戦闘ヘリをはじめ、レオパルト2戦車、武装装甲車、兵員輸送車や野戦病院まで本物が一通り網羅、展示されている。 みんな自由に装甲車に乗りこみ思い思いに武器を構えてポーズをキメる。ちびっこは一丁前に兵士から操作方法の説明をうけて機関銃や地対空ミサイルの狙いをつけて一人前の顔をして得意気に親御さんの写真撮影に応じる。 兵士も気さくででかいライフル銃を持ちサマになるすがたで一緒に記念撮影に応じたり、いろいろ説明しながら冗談飛ばしているようであちこちで驚きの声や爆笑がきこえた

 

調子にのった消防隊が放水銃でちびっこ達の帽子を空高く吹き飛ばす。ただそれだけなのだが、ちびっこ達はずぶ濡れになって大喝采。僕の帽子も、とみんな頼み込み消防隊は、引っ込みがつかなくなってしまった。 綺麗な青空に高く舞い上がる小さな帽子と放水の放物線の下、両手を上げピョンピョン跳び跳ねながら歓声をあげるちびっこ達を眺めていると彼らの幸せな暮らしをすこしだけお裾分けしてもらった気がした

 

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